ある居酒屋で一人の男が飲んでいた。
A崎真一。プロ野球大阪アスレチックスの一員である。
A崎 「おやっさん。俺、もう引退するわ。」
おやっさん 「何で?」
A崎 「いつまで経っても、代打くらいしか試合に出られへんし、、、。」
おやっさん 「代打くらいって、、、。代打のどこがあかんのんや?」
A崎 「そりゃ、一試合フルに出れるくらいやないと、一流って言わんやろ?」
おやっさん 「そんな事ないやろう。」
A崎 「そうかぁ?」
おやっさん 「代打だろうが何だろうが、お前、野球で飯食ってるんやろ?」
A崎 「プロやからな。二流やけど。」
おやっさん 「二流?二流って何や?目指しても、手が届かん奴が山ほどおるんやぞ。」
A崎 「そいつらの分まで頑張れっちゅう説教はゴメンやで。」
おやっさん 「誰がそんなアホな事言うかいや。ワシが言いたいのはなぁ。」
A崎 「なんやねん。」
おやっさん 「何人もの奴が目指してもなれへん世界で生きてる奴に二流なんかおらへんっちゅう事。」
A崎 「二流なんかおらへん、、、?」
おやっさん 「そや。よう考えてみ。お前はお前のお父ちゃんとお母ちゃんから生まれたわけや。その二人の何かをお前は受け継いだ。その一つが野球という世界のプロとしてやっていける程の才能。」
A崎 「、、、。」
おやっさん 「その親から貰ったものをお前の長い間の努力で、さらに昇華させて、今のお前があるわけ。すごいと思わんか?そんな奴が生まれてくる確率、一体どれくらいや思う?何万分の一?何億分の一?そんなとてつもない確率で生きてきた奴に二流なんかおらん。みな一流や。」
A崎 「でも、昨日の試合でも俺が三振してもて、、、。」
おやっさん 「そんな失敗くらい何やねん。そんな事もあるわいや。その一方で、お前のヒットで人々が熱狂し、チームに勝利をもたらす事もあるやろ?お前の出番を心待ちにしてる人がいるやろ?」
A崎 「そらまあ、ちょっとくらいは、、、。」
おやっさん 「引退なんて、いつでもできる。いや、ほっといても引退せなあかん時は必ず来る。そんなら、わざわざ、自分からしたる事もないやろ。」
A崎 「うん。」
おやっさん 「お前の事を応援する人間が一人でも。たった一人でもおる限り、野球続けてくれんか?」
A崎 「おやっさん、、、。」
おやっさん 「ん?」
A崎 「ビール、もう一本!」
おやっさん 「おう。」
A崎 「今日は飲むで!明日の俺の活躍の前祝や!」
おやっさん 「あいよ。」
おやっさんは勢い良く、冷えたビールの栓を開けた。
2010年02月05日
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